第三話 1-3 宝皇女(斉明帝)の再登場(重祚)
1-3 宝皇女(斉明帝)の再登場(重祚)(六五五年~六六一年)
孝徳帝の崩御により、廃位に追い込まれたはずの宝皇女が、六五五年正月飛鳥板葺宮で再び帝として即位(重祚)します。これが斉明帝です。
この時、宝皇女は既に六十二歳になっています。この時点では、山背大兄王も古人大兄皇子も既に殺害されていますから、舒明帝と宝皇女の長子であり、乙巳の変の指揮を執ったはずの中大兄皇子が堂々と帝位に就いて何の不思議も無いのですが、年取った老母を再び帝位に担ぎ出しています。
同一人物が二度即位する「重祚」という即位形式も、これが史上初めての出来事ですし、全く不思議な即位だといっていいでしょう。
なお書紀の斉明帝即位前紀条に、『(斉明帝は)最初高向王(たかむこおう)と結婚し、漢皇子(あやのみこ)を産んだ』とあります。
漢皇子については、この条のみに登場するだけですから、何者であるかを特定する定説はなく、この時期、書紀への登場が希薄な大海人皇子(後の天武天皇)のことではないかという説もあります。